目次

はじめに ……2

第1章 まずはプロフェッショナルサービスの特徴を確認しよう
1-1 プロフェッショナルサービスの特徴 ……16
1-2 信用の獲得と専門分野の決定が必須! ……24
1-3 顧客獲得の手法 ……33
第2章 アンケートでわかった独立技術コンサルタントの実態
2-1 アンケートに協力して下さった皆さま ……44
2-2 独立技術コンサルタントの実態を開示! ……51
第3章 1000万以上売り上げる技術コンサルタントの特徴
3-1 業務内容と業務獲得ルートの特徴 ……90
3-2 人脈から業務を獲得する方法 ……99
3-3 単価はいくらに設定するべきか? ……105
3-4 専門分野の範囲、 情報発信、 トレンド ……110
第4章 1000万円以上売り上げるための戦略
4-1 まずは基本戦略を確認! ……128
4-2 独立開業する前の人脈から仕事を獲得する具体的方法 ……130
4-3 専門分野は4つの条件を満たすもの ……137
4-4 将来のための布石を打て! ……145
第5章 ブランディング活動の詳細
5-1 ブランディング活動をせよ! ……154
5-2 資格はブランディング手段の1つ ……155
5-3 セミナー講師は必須! ……165
5-4 投稿論文の2つのポイント ……176
5-5 書籍出版のトライしよう ……189
5-6 ホームページは必要、 法人設立は不要 ……202
第6章 ブランディング活動の詳細
6-1 典型的なA氏 ……210
6-2 成功は難しいB氏 ……223
6-3 ちょっと変わったC氏 ……229

おわりに ……234

はじめに

・仕事ゼロからのスタート、 そして4年後には膨大な量の仕事が絶え間なく入ってきた!
 私は25歳のとき新卒で鉄鋼会社に入社し、技術者として働き出したものの、6年6か月後には退社しました。
 その後、 特許事務所へ転職し、特許実務を覚えつつ弁理士試験のための勉強をしていたのですが、なかなか合格できず、結局、合格するまでに5年もかかりました。
 そして、無謀にも資格を取得した次の日に独立開業しました。今から8年数か月前の38歳のときです。

 何の用意もコネもなく仕事のあてもないのに独立したのですから、当然ながら仕事がありません。完全に無職と同じ状態です。当時、 妻が働いていましたので飢え死はしないとしても、ヒモ状態といってよいでしょう。
 そこで、この状態から早く脱出するため、どうすれば仕事を獲得できるのかを猛烈に勉強し出しました。

 士業やコンサルタントのための仕事獲得法や、セミナー講師になる方法、書籍出版法等についての書籍を何十冊と購入し、懸命に読みました。コンサルタントとして独立開業して成功するためのノウハウを教示する、数十万円もするウェブセミナーを購入したこともあります。

 そして、書籍やセミナー等から得た一般的かつ抽象的な情報を咀嚼して自分になりに理解して具体化し、一つずつ実践していきました。
 お金がなかったので自分でホームページを作ったり、いろいろな飲み会に参加してコネを探したり、セミナー会社へ電話して講師を担当させてもらえるように必死でお願したり、出版社へ掛け合ったりもしました。
 そして、その実践結果を検討し、修正して再度実践を繰り返すPDCAを回していきました。

 そうすると少しずつ結果が出始め、じわじわと仕事を獲得できるようになっていきました。
 そして、4年後には私一人が朝から晩まで働いても処理できない程の仕事が絶え間なく入ってくるようになりました。そこで、都心にそこそこ綺麗なオフィスを借り、株式会社を設立し、従業員を複数雇い入れ、何とか膨大な量の仕事を処理していきました。

 このような経験があるため、私は士業やコンサルタントのような専門家が独立開業して成功するための基本的な方法(以下では「専門家の基本的成功法」とも言います)を理解しているつもりです

・技術コンサルタントは魅力的な仕事
 私は鉄鋼会社に勤務していたときは、技術コンサルタントとして独立開業することを夢見ていました。そのため技術士の資格を取得していました。

 技術コンサルタントとして独立開業することには、理系人にとって非常に多くのメリットや魅力があります。技術コンサルタントは知識、経験、ノウハウを活かせる仕事ですから、企業において技術開発や研究開発に関わってきた人に最適な仕事といえるしょう。

 例えば、定年がなく、自由に休みが取れ、嫌な人と付き合わなくてもよく、嫌な仕事を引き受けなくてもよく、午前中は寝ていて夜中に仕事をしてもよく、毎朝、満員電車に乗らなくてすみます。

 また、パソコンさえあれば立派なオフィスを構える必要もなく、在庫をかかえる必要もないので、ほとんど資金がなくても簡単に開業することができる点も魅力的です。
 また、将来、自分が定年になったときに年金がほとんどもらえなくなってしまうのではないかと心配になり、定年後も頭や体が動く間は仕事をしたいと考えている人は多いと思いますが、このような人にも技術コンサルタントとして独立開業することは適しています。

 さらに、これまでの経験を活かすことができ、体力的にもきつくない仕事ですので、かなりの年齢に達していても継続できます。私の知る限り、80歳を過ぎても週に4、5回は顧問先の企業へ出向き、指導している技術コンサルタントがいらっしゃいます。

・技術コンサルタントは稼げない?
 私は、独立開業当初、営業活動をかねて技術士の集まりに参加していました。
 そして、多くの技術士と直接お話させて頂いたところ、独立開業している技術士の中である程度以上売り上げることができている人が非常に少ないことを知りました。
 事実、 公益社団法人日本技術士会が平成25年5月27日に公開した「技術士業務報酬アンケート調査報告」には、受託した業務の請負金額について、全体の94%が300万円以下と回答し、報酬額(時間単価)は最大で40000円、最小で1250円、平均で11701円であり、さらに、受託した業務の実質的な執務時間については全体の83%が300時間以下と回答したと記されています。

 これは独立開業している技術士の94%の年間売上額が300万円以下であることを示しているわけではありませんが、執務時間と平均単価から考えると、9割程度の人の年間売上額が350万円以下(≒11701円×300時間)であったと推測することもできます。
 いずれにしても、独立開業している技術士の中で、ある程度以上売り上げることができている人が少ないことを裏付けるデータです。

 一方、私自身は先ほどお伝えしたように専門家の基本的成功法を理解しているつもりです。
 そこで、この方法を独立開業している技術士等の技術コンサルタントへお伝えすることで、ある程度以上売り上げることができる技術コンサルタントを増やすことができるのではないか、ひいては、独立系技術コンサルタント業界の活性化に多少でも貢献できるのではないかと考えました。
 また、従来、技術コンサルタントが稼ぐ方法を説明する書籍は存在しなかったため、それを一冊にまとめることには一定の意味があるだろうとも考えました。
 そこで、この書籍を書くことにしたのです。

 ここで、私が知っている専門家の基本的成功法は、専門家の一つである技術コンサルタントにも当然に有効であろうと考えていました。
 しかし、もしかしたら、技術コンサルタントに特有の事情があり、それが原因で技術コンサルタントの売上が増加しにくくなっている可能性もあります。

 そこで、実際に技術コンサルタントとして独立開業している人にインタビューしたり、アンケートを取ったりして、その特有の事情の有無等を探りました。
 そして、これを考慮したうえで、技術コンサルタントが独立開業して成功するための方法をまとめました。
 なお、本書においては、第1章が専門家の基本的成功法の解説に相当し、第2章、第3章が技術コンサルタントに特有の事情の調査等に相当します。

・稼げている技術コンサルタントは何をしているのか?
 これまで企業に所属していたときは、基本的には上司等が自分に仕事を与えてくれ、自分はその仕事を懸命にこなせば良かったと思いますが、技術コンサルタントとして独立開業すると誰も仕事を与えてくれません。
 そこで、実務とは別に仕事を獲得するための仕事を行う必要があります。
 しかし、長年、企業で技術開発や研究開発を行ってきた人には仕事を獲得するための仕事、すなわち、営業活動の経験がなく、やり方が分からない人も多いようです。
 また、企業に所属していたときに営業部に所属していたり、営業部に所属していなくても営業活動を経験したりした人もいると思いますが、例えば大企業の看板を前面に押し出して商品を売る営業と、技術コンサルタントという個人がサービスを売る営業の方法が全く異なることは、容易に想像できると思います。

 私はこれまでに多くの技術コンサルタントとお会いし、また、本書を作成するにあたって新たに多くの技術コンサルタントにインタビューさせて頂きましたが、技術コンサルタントとして成功している人は、ほぼ全員、仕事を獲得するために相当の努力をしているといえます。
 極めて高い能力を持っている人でも仕事がないのであれば、その能力を発揮する場がありませんので、 技術コンサルタントとして成功することは不可能です。

 技術コンサルタントとして成功できるか否かは、結局のところ、十分な量の仕事を獲得できるか否かにかかっていると言って良いと思います。

 仕事を獲得できさえすれば、他のこと、例えば経理処理とか、開業届の書き方とか、法人の作り方とか、契約書の作り方とか、そのようなものは何とでもなり、それらがうまくできないために技術コンサルタントとしてうまくやっていけないということは無いと断言できます。

 本書では、実際に会社を辞めて独立開業し、成功している技術コンサルタントたちがどのような活動をして、どのように仕事を獲得し、そして、どの程度稼いでいるのかを開示します。

2017年11月 高橋政治